日別アーカイブ: 2010年3月26日

【書評/Review】雇用の常識と合わせて読みたい本。またMECEという考え方。

先程の記事で紹介した雇用の常識「本当に見えるウソ」を補足する内容と関連したお勧めの書籍を紹介します。

私がテレビや新聞があまり面白くないと思っている理由は、物事を「点」でしか考えない点です。「特定の時期に」「一部の現場で」起きた事象をさも「日本全体で起きている大問題」のように論じられているのを見ると、検証が不十分だと思ってしまいます。これは雇用の常識「本当に見えるウソ」の著者である海老原嗣生さんも同じように考えているようです。もちろん速報性が大事なNewsではそういう特定の「点」を報道する事も大事かもしれないと理解できます。しかし、時にはもっと大きな視点を持って報道してほしいです。

「点」「線」として考える、つまり時間軸を過去の20年間、そしてまた未来の20年間もどうかという観点でも論じてほしいです。また、その「線」を今度は「面」として考える。つまり、特定の業界だけでなく他の業界はどうなっているのか、日本だけでなく他国はどうなっているのかという観点を付け加えてくれるとさらに良いです。この点・線・面の考え方は私独自の考え方ではなく、おそらくMECEに関連した思考方法で似たようなものがあると思います。

客観的に考えるためには、そして差別化したり、独創的な発想を出すにはMECE(点・線・面の考え方)の発想は欠かせないと思います。MECEで考えないと他の人が考えている事と同じことしか考えられないからです。また、MECEに基づいて議論をしないと「空・雨・傘」の「空(事実を把握する)」を踏まえずに「傘(対策をどうするか)」の事ばかり論じる事になるので、結局揉めるだけで決まらないと思います。

MECEで考える一例を挙げます。MECEの視点で見れば、例えば現在の日本では雇用不足といわれているけど、実は人には知られていないけど儲かっている業界があるのではないか、そこでは人手不足があるのではないかと考えられます。さらに視点を変えてみると、日本国内だけの雇用ではなくAsia諸国における雇用はどうかと考えることも出来ます。そしてまた、現在においてはAsia諸国の方が日本よりも賃金が低いかもしれないけど、それを20年後までを視野に入れたらどうなるのか。20年後には日本で働いた場合よりも、Asia諸国の方が生活環境はずっと良くなっているかもしれないのでは、ということも考えられます。MECEで考えるというのはこういう事です。

もう一つMECEで考えるとこんなに良いことがあるという例を紹介します。MECEで考えることは人の長所を見つけるのに役立ちます。例えば、特定の分野・業務については苦手な人でも、別の分野では類まれな能力を持っている場合があります。その人が持っている能力をMECEで分析すると、これまでに気付かなかった長所に気付くことが出来ます。さらにこれに横軸で考えると、時間をずらして考えると「現在はあまり能力がない人」でも「5年後には有能な人」になっているかもしれません。「MECEで考えると優しくなれる」が私の持論です。

このようなMECEで考える方法を身につけられる書籍を以下に紹介します。

  1. 書籍 勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力 ビジネス思考法の基本と実践
  2. Audiobook 勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力
  3. 書籍 図で考える人は仕事ができる (日経ビジネス人文庫)
  4. 書籍 反社会学講座 (ちくま文庫)

MECEを学ぶ入門編としては1の書籍が良いと思います。注意点を述べると2~3回読んだだけでは、この思考法はまず身につきません。ですから2のAudiobookで繰り返し聞くことをお勧めします。

またそこまで難しく考えなくても、3で図を使って分かりやすく説明する方法を学んでいけば自然とMECEの考え方が身につくと思います。3が一番簡単に論理的に説明する技術が身につく本かもしれません。

真面目な本ばかりだと疲れるので最後におまけ。4で笑いながら「物事にはこういう見方もあるんだ」という事を学ぶのがお勧めです。4は雇用の常識「本当に見えるウソ」と同じように「統計資料を分析して、世間の常識は間違っていると論破していく形式」で書かれています。でも、目指すべき点が「お笑い」なのでとにかく気楽に読めます。お勧めです。私は反社会学講座 (ちくま文庫)が大好きです。

【書評/Review】雇用の常識「本当に見えるウソ」 著・海老原嗣生

本書では世間一般で信じられている雇用に関する俗説を統計資料を元にそれが正しいかどうか検証しています。その結果、世間一般で信じられている事の大半が誤りであるという結論を導き出しました。以下世間一般の認識と正反対の結論が出た項目をいくつか紹介します。

  • 終身雇用は崩壊していない
  • 転職はちっとも一般化していない
  • 若年の就労意識は30年前のまま
  • 本当の成果主義なんて日本に存在しない
  • 派遣社員の増加は、正社員のリプレイス(置き換え)が主因ではない
  • 正社員は減っていない

一例として「正社員は減っていない」の結論に至って経緯を以下に簡単に紹介します。

  • 生産年齢人口の増減に伴ない正社員は増減してきた。
  • 正社員数はその時々の経済動向に左右される。
  • 実数で見ると正社員数は増えている。ただし、非正社員が特に増えたから正社員が増えていないように見えるだけ。

以上の要因をを各種統計資料から読み取っていました。ここでは全ての事例を取り上げませんが、このように主観的ではなく客観的なDataに基づいて実際はどうなっているのかという事を検証している姿勢はとても好感が持てました。一部の事象を針小棒大に報道するマスコミに不満を感じている人にお勧めの一冊です。

通常マスコミは日経新聞に取り上げられるような大企業についてしか報道しません。そして、その大企業というのは日本の経済からするとごく一部にすぎません。だからマスコミが取り上げる情報というのは片寄っています。また、毎日新しいNewsを取り上げ続けるマスコミの限界には限界があると私は思っています。一方マスコミとは異なり本書では長期的な時間軸を、現在と1990年ではどのように違うのかという観点から、マスコミが通常しない(できない)観点から事象を説明しています。人口の移り変わり、経済の変動、他国の事情はどうなっているのか。その時々に発生するごく一部の人が抱える問題ではなく、日本全体としてどうか、過去と比べて、そして他国と比べてどうかという観点で問題を分析します。

そして著者は象牙の塔にこもって研究ばかりしてきた人ではなく、転職・派遣という人材を扱う仕事を長年してきた人なので記述が具体的です。きれいな一般論では終わりません。さすがエンゼルバンクの原作だなと思いました。エンゼルバンク、そして過去・現在・未来の雇用情勢に関心を持つ人にお勧めの一冊です。私個人としてはこれから必ず起こる人口の減少とそれに伴なう移民の是非、そして女性を全く活用出来ていない日本企業について色々と考えさせられました。

注意点を一つあげると、本書は統計資料がたくさん紹介されているので、そういう資料を読む覚悟を持った人にだけお勧めします。自分でも考えながら読む必要がありますので、腰を据えて読みましょう。また私は本書は繰り返し読んで、自分でも元になった資料を読もうと思っています。こういう姿勢の人のみが本書の内容をちゃんと理解できると思います。