【書評/Review】雇用の常識「本当に見えるウソ」 著・海老原嗣生

本書では世間一般で信じられている雇用に関する俗説を統計資料を元にそれが正しいかどうか検証しています。その結果、世間一般で信じられている事の大半が誤りであるという結論を導き出しました。以下世間一般の認識と正反対の結論が出た項目をいくつか紹介します。

  • 終身雇用は崩壊していない
  • 転職はちっとも一般化していない
  • 若年の就労意識は30年前のまま
  • 本当の成果主義なんて日本に存在しない
  • 派遣社員の増加は、正社員のリプレイス(置き換え)が主因ではない
  • 正社員は減っていない

一例として「正社員は減っていない」の結論に至って経緯を以下に簡単に紹介します。

  • 生産年齢人口の増減に伴ない正社員は増減してきた。
  • 正社員数はその時々の経済動向に左右される。
  • 実数で見ると正社員数は増えている。ただし、非正社員が特に増えたから正社員が増えていないように見えるだけ。

以上の要因をを各種統計資料から読み取っていました。ここでは全ての事例を取り上げませんが、このように主観的ではなく客観的なDataに基づいて実際はどうなっているのかという事を検証している姿勢はとても好感が持てました。一部の事象を針小棒大に報道するマスコミに不満を感じている人にお勧めの一冊です。

通常マスコミは日経新聞に取り上げられるような大企業についてしか報道しません。そして、その大企業というのは日本の経済からするとごく一部にすぎません。だからマスコミが取り上げる情報というのは片寄っています。また、毎日新しいNewsを取り上げ続けるマスコミの限界には限界があると私は思っています。一方マスコミとは異なり本書では長期的な時間軸を、現在と1990年ではどのように違うのかという観点から、マスコミが通常しない(できない)観点から事象を説明しています。人口の移り変わり、経済の変動、他国の事情はどうなっているのか。その時々に発生するごく一部の人が抱える問題ではなく、日本全体としてどうか、過去と比べて、そして他国と比べてどうかという観点で問題を分析します。

そして著者は象牙の塔にこもって研究ばかりしてきた人ではなく、転職・派遣という人材を扱う仕事を長年してきた人なので記述が具体的です。きれいな一般論では終わりません。さすがエンゼルバンクの原作だなと思いました。エンゼルバンク、そして過去・現在・未来の雇用情勢に関心を持つ人にお勧めの一冊です。私個人としてはこれから必ず起こる人口の減少とそれに伴なう移民の是非、そして女性を全く活用出来ていない日本企業について色々と考えさせられました。

注意点を一つあげると、本書は統計資料がたくさん紹介されているので、そういう資料を読む覚悟を持った人にだけお勧めします。自分でも考えながら読む必要がありますので、腰を据えて読みましょう。また私は本書は繰り返し読んで、自分でも元になった資料を読もうと思っています。こういう姿勢の人のみが本書の内容をちゃんと理解できると思います。

【書評/Review】雇用の常識「本当に見えるウソ」 著・海老原嗣生」への1件のフィードバック

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