日別アーカイブ: 2010年4月10日

米国最大の都市型動物園、Bronx Zoo。

この記事はNYCにあるBronx Zooには去年の9月に行ってきた記録です。当日は秋晴の広がるとても気持ちの良い一日でした。当日の写真はこの記事の最後にまとめて掲載しています。

NYCのBorough(区)の一つであるBronxは治安が悪いことで有名です。私もBronxにはなるべく近づくなと言われていました。観光客がBronxに行くのなら、ニューヨーク植物園、ヤンキーススタジアム、Bronx Zooの3つだけにしておきましょう。私に取ってはBronx Zooに行ったその日がBronx初体験でした。また、私が住んでいたBrooklynからは2時間弱かかりました。途中のManhattanでShuと会って、二人で訪れました。Manhattanの中心部からBronx Zooまでは約1時間です。

Bronx Zooはとにかく広い動物園でした。まずこの点で上野動物園や東山動物園を圧倒しています。私は1日そこにいてたぶん半分も観れなかったと思います。Bronx Zooの写真を見返すとNYCが最も美しくすごしやすい季節である9月だったので、きれいな空や美しい緑がたくさん映っています。雄大な緑に覆われたきれいな動物園でした。

公式Websiteでも「市民への教育」を前面に打ち出しているだけあって、環境教育の分量が凄いです。動物の展示もさることながら、そういった資料関係も充実していました。個別の動物の紹介をすると収集がつかなくなるのであまりしませんが、例えば日本では見ることができない動物をたくさん見ることができます。入り口すぐのとこにBisonがいました。

動物園の大きさが広大であるのに合わせて、動物たちにも広大な場所が割り当てられていました。NYCにある都市型動物園なのに、日本の動物園と比較にならないくらいに大きいです。前記事で紹介したエンリッチメントの一つである、給餌もそこでは工夫されていたようです。時間毎にいかに動物を楽しませるかWebsiteで紹介されています。公式Websiteで時間帯を確認して見逃さないようにしてください。

園内では動物を囲う塀が人間からは分かりにくくなっています。これは動物たちへの配慮もあると思いますが、それ以上に来場に動物の本来あるべき姿を見せるための配慮かなと思います。またBronx Zooの広大な敷地を歩きながら、そして歩いている途中でも動物の生態について学べるように様々な展示がされていました。こういったセンスの良さも日本の動物園にあればなと思いました。そしてあまりに広いので、私たちは園内を走る小型の列車のような車に乗りました。一緒に乗った子供たちがずいぶんとはしゃいでいました。あと虎、ゾウ、サイなどを見るのには特別に列車に乗らなければ行けませんでした。立ち止まらずに動物を遠目に見ることで動物になるべく負担をかけない試みかなと思いました。

結局、1日使って半分も見れませんでした。広すぎです。Bronx Zooは一度の来訪で終わらせずに定期的に通えということでしょうね。Bronx Zooでは前記事で紹介した環境エンリッチメント(environmental enrichment)を実現し、動物たちになるべく「幸せな暮らし」を送れるように様々な配慮がされていることが分かりました。

そしてまたこの記事を作成するにあたって、日英両方のWebsiteを比較してまわりました。そして動物園の記事に関しては英語圏が圧倒的に充実していること、日本側はそれらに比べると質・量ともに劣っていることに気付きました。川端裕人の動物園にできることのAmazon書評欄に印象的な言葉があったので紹介します。

「読後、ここでも民度の低さに準じた施設(動物園)しか持ちえないのか?と嘆いてしまいました… 」

私も同じ事を感じました。動物に対する関心がそのまま施設の質に比例しているように思えます。日本は旭山動物園で盛り返しつつあるようですが、上野と東山を見る限りだとまだまだ予算・人員の点から劣っています。

“In the end, we will conserve only what we love, we will love only what we understad, we will understand only what we are taught.”

Bronx Zooに掲示されていたこの言葉がまだ心に残っています。私達は結局自分たちが教えられて理解しているもの、そして理解して愛しているものしか守れないと思います。日本の動物園とは比較にならないくらいに充実しているBronx ZooはNYCに行くのなら是非とも抑えておきたい場所の一つです。できれば2回以上訪問してください。1回じゃとてもじゃないですが、全部は見れないです。以下、当日撮影した写真にそって動物達を紹介していきます。

現代動物園事情。動物達に幸せな暮らしを送ってもらいたい。

Bronx Zooを紹介する前に、この記事で「現代の動物園事情」について簡単に紹介します。これを踏まえておいてもらわないと、Bronx Zooが「たんなる大きな動物園」と思われる恐れがありますので。

どうぶつえん【動物園】生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕らえて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀なくし、「飼い殺し」にする、人間中心の施設。

新明解国語辞典 第4版より抜粋しました。この新明解の文章が書かれていたのはかつて動物園が見世物小屋だった時代の名残だと思います。しかしながら日本の動物園は未だに米国と比べるとかなり遅れているので、この領域を出ていない動物園もいまだにあるかもしれません。

現在の動物園の主な役割は「研究」「市民への教育」「種の保存」の3本柱となっています。動物園がかつて見世物小屋であった時代から、現在はこのように変わってきています。そしてまた、本来いるべき自然環境から切り離された動物達になるべく“幸せな暮らし”をしてもらいたいと考える人達が新しい考えを打ち出しました。これを環境エンリッチメント(environmental enrichment)と言います。環境エンリッチメントとは、「動物福祉の立場から、飼育動物の“幸福な暮らし”を実現するための具体的な方策」のことを指します。

さらに環境エンリッチメントについて主に二つの点から紹介すると、「生態展示」と「行動展示」というものがあります。「生態展示」とはその動物が住んでいた環境となるべく似た環境で動物を飼育する事です。これと正反対なのは、動物の都合を考えずに檻の中に閉じ込めて見世物にする事です。「生態展示」では多摩動物公園の昆虫が有名とのことです。一方の「行動展示」はその動物らしい生態や能力を、動物自身も楽しみながら自然に引き出して鑑賞者に見せるように工夫した展示です。これは旭山動物園が有名です。具体例抜きで紹介しても理解するのが難しいと思うので、ここで面白い記事を紹介します。気楽に読んでください。

私は大学時代に川端裕人の動物園にできること という本を読んで、動物園に興味を持ちました。このときはまだ旭山動物園が有名になる前でした。当時に比べれば、エンリッチメントという考え方も日本でずいぶんと普及したと思います。そして私は日本で一番大きな動物園、上野動物園(東京)と2番目に大きな東山動物園(名古屋)に行ったことがあります。これら動物園もこのエンリッチメントという点ではBronx Zooと全く比較になりませんでした。

川端裕人は動物園にできることの中で日本の動物園の窮屈な檻の中に閉じ込めれて、自然界ではあり得ない不自然な行動を取る「幸せでないクマさん」を取り上げていました。Bronx Zooはそんな日本の動物園と何が違ったか、そういう観点も含めた上で次の記事でBronx Zooの紹介をしていきます。

あとこの記事では真面目な話が多かったので、楽しみながら、息抜きしながら動物達の生態を学べる本も紹介します。世界で一番使えない実用書の「ライオンの飼い方 キリンとの暮らし方」はお勧めです。この本は「四畳半のアパートの一室でライオンやキリンを飼うためにはどうしたら良いのか」ということを真剣に取材した上でそのノウハウを紹介してくれます。本当に馬鹿馬鹿しい本なのですが、その全力で馬鹿な事をする様が私は大好きです。

  • 追記 動物園にいる動物たちに「幸せな暮らし」を送ってもらう、この考え方の多くは様々な個性を持った人々を活かそうとする現代の企業経営に流用出来ます。私は自分が専攻している経営学と驚くほど似た思考方法を持つ現代の動物園に惹かれてこれらについて調べ続けました。経営学やManagementに興味のある人は一度動物園について調べてみることをお勧めします。そこにはたくさんの気付きがあります。