【書評】7割は課長にさえなれません~年齢で人の価値が決まってしまう国~

本書では第1章の章題から胃が痛くなるようなものが並んでいます。

  • 「第1章 年齢で人の価値が決まってしまう国」
    • 「売り手市場 売れていくのは新卒だけ(30歳、派遣社員)」
    • 「晴れの入社式 夢も希望も 捨ててまいりました(22歳 学生)」
    • 「二人産んだら あとがない(37歳、女性一般職)」

履歴書に年齢を書くことが当たり前だと思っている人がいるかもしれません。でも、当たり前じゃありません。例えば私は米国企業向けに英文履歴書を書いた際には年齢・性別・写真の情報を明らかにする必要はありませんでした。日本の常識が必ずしも世界の常識ではありません。そして履歴書に年齢を書く必要がなければどのような可能性が生まれるでしょうか。例えば、現在は浪人・留年込みで寄り道は2年しか許されていない新卒採用というおかしな仕組みもなくなります。数年間の寄り道も許されるようになります。現在では認められていない多様な生き方が出来るようになるのです。逆に飛び級も有りになると思います。年齢という枷を外せば、途端に多様な生き方の可能性が生まれるのです。そして、「第1章 年齢で人の価値が決まってしまう国」を読んでいて、なんとも嫌な気持ちになったのは、この日本特有の「年齢差別」という「風習」が前面に押し出されていた点です。

  • 「第2章 優秀な若者が離れていく国」
    • 「末は博士かフリーターか(30歳、大学院博士課程)」
    • 「フリーターや女性なんて雇えるか!(大手自動車メーカー会長)」
    • 「日本企業だけは勘弁してください(エリート一同)」

「学ぶことが失点として助成される国」高度な内容を学べば学ぶほど、企業から敬遠される社会に未来はあるのか。よく分からない対人折衝能力(コミュニケーション能力)だけを重視する社会でInnovation技術刷新を起こせるのか。博士課程の話は読んでいて特に暗い気持ちになりました。例えば、世界中から優秀な人材を集める米国とこのような惨状の技術立国がまともに競争できるのでしょうか。

「平均以上の人間に敬遠され、平均以下の人間にウケがいい日本型雇用」では優秀な人間はみな外資系企業に行ってしまいます。だから「外国人に『終身雇用、年功序列』はデメリットとしか映らない。」「日本人若手エリートにも、同じ傾向が見られる」「東京との格差が縮小することで、アジアの新興都市(シンガポール・香港など)との横断的転職市場が形成されつつある。」ということになります。平均以上の人間にとっては、日本企業の労働環境の悪さ、報酬の低さは耐えられないものです。詳細は過去にblog記事に書きました。

「第2章 優秀な若者が離れていく国」まで読み終わった時点でかなり暗い気分になっていました。そして暗い話題はまだ続きます。

  • 「第3章 弱者が食い物にされる国」
    • 「雇用死守 終わってみれば 氷河期世代(ロスジェネ一同)」
    • 「社員より いっぱいあるのは リスクだけ(派遣社員)」
    • 「ばらまいて 残ったものは 赤字だけ」

「もっとも弱い人間が最大のツケを払う」ここで言う弱い人間は「若者世代」です。中高年の正社員を維持するために、若者が雇用されない、給料が減らされるという話が紹介されています。この話題に関連して最近特に暗い思いになったNewsは公務員の採用抑制です。人件費削減のしわ寄せが現行の公務員ではなく、本来雇われるはずだった公務員、つまり若者達を雇わない事で人件費を削減した事です。現状の既得権益には手をつけずに、最も立場の弱い人間にツケを押し付けたのかと、このNewsを知ったときはかなり暗澹たる気持ちになりました。

現状、この立場の弱い若者を代弁する政党は無いです。民主・自民・共産、全て若者世代のための政策を取っていないと本書では説かれています。それは若者世代は他の世代に比べると選挙に行かないからです。iPad購入一番乗りを競う若者たちはいても、地域の投票率を競い合う若者集団なんて私は聞いたことがありません。イベントに徹夜で並ぶ若者の熱意をもっと政治の方向に向ける方法はないのか。これは私がずっと考えている事の一つです。

エピローグまでは散々暗く待ったなしの日本の現状が書かれています。しかし、エピローグでは一転明るい未来があります。

  • エピローグ 201X年 明るい未来
    • 「54歳で転職できた窓際部長」
    • 「働く仲間はみな”社員”(同一労働・同一賃金の実施)」
    • 「寄り道可能なキャリアパス」

「解雇しやすい雇用制度=新規雇用しやすい制度」を実施して、挑戦して失敗できる、そして失敗しても挽回出来る、そんな社会が実現すれば日本もまだ盛り返せるというのが著者が最も伝えたい事です。失敗を認めない社会、そして多様な生き方を認めない社会では誰も挑戦しなくなります。そんな社会では閉塞感で押しつぶされる人々が増えます。

日本の大手企業の多くが時代に合わない硬直した「新卒採用・年功序列・終身雇用(これはもう崩壊しているか)」雇用制度を維持しているため、このような閉塞感を生んでいる。これは著者の城繁幸さんが各所で繰り返し語っていることなので耳にした人は多いことでしょう。

変わることが出来ない人は生き残れない。変わることが出来ない企業も生き残れない。そして、現在の日本の閉塞感・不況は現状の既得権益にしがみついて変われない人達がもたらしたものだと私は考えています。現状を嘆いているだけではなく、若者たちは現状を自分たちで変えていきましょう。そして、これを読んでいる大人達はせめて前に進もうとする若者達の邪魔だけはしないでください。また、この記事の内容に興味を持った人は7割は課長にさえなれませんを読んでみて下さい。

追記

この記事の下書きをTwitter上でした際にたくさんのReply、RTをもらいました。それらを以下に紹介します。

年齢差別 「試行錯誤や失敗」が許されない社会。

  • たった2年で…>日本の新卒採用の年齢に関しては2年でもかなり厳しいようです。当方学習内容の関係で2年遠回りしてますが、企業の説明会で人事の方に話を伺うと「採用はしない」という回答を遠回し遠回しに言われます。
  • かなり前になりますが、リクルーターとして大学に来たOB(某大手電機メーカー)から直接聞きましたよ。新卒でとれるのは一浪一留まで、だそうです。それ以上となると普通の新卒就職はかなり厳しいそうです。
  • 私も2年遠回りしたクチだけど、やりづらさはあったなー。最短ノーミスプレイを強要される社会。
  • 失敗できない社会そのものがナンセンス。今は何処にも「解答」は存在しない。誰にでも試行錯誤が義務づけられている。
  • 一浪、一留を「失敗」と見ること自体、固定観念な気が…>新卒採用は未経験者採用。人間一度くらいは失敗することはあるし、実際一浪や一留を気にしない企業も多い。でも2度目となると厳しいのは当然かと。新卒採用は未経験者採用。人間一度くらいは失敗することはあるし、実際一浪や一留を気にしない企業も多い。でも2度目となると厳しいのは当然かと。
  • 2010年度卒で失敗した人は地獄です。不況の波に飲まれて取り残されてさらに公務員のこの制度で夢も希望もない。本当に何を考えたらこうなるのかがわからないです。
  • 話それますが、新卒採用だけじゃなく中途採用でも変な会社ありますね。私の同僚でそれまでイギリス留学→現地就職で欧州で働いてた人がいますが、日本に帰国して採用された際に「海外での経験は評価できないから」みたいなこと言われてひどい給料を提示されたと言ってました。
  • 今の企業は、年功序列を維持しながら成果主義を取っています。だから、生気が無くてふらふらデス。しかし、伸びている企業は、ユニークな人事体制を引いていると思います。企業も淘汰され生まれ変わるしかありません。私の会社もその刹那でもがいている訳です。若い人に期待するだけ。そして、既得権益も減らざるおえないでしょう。既得権益で生きてきた人間は、それこそ弱いものですよ。自民党の最後を見れば、良くわかると思います。300議席もあるのに何も出来なかった。

年齢だけじゃなくて家族構成も大事

  • 私が新卒の頃なんて、家族の名前、年齢、職業まで書く欄があったんですよw そして、最近では 「年齢・性別・写真」を書くことに疑問を感じはじめています。某質問サイトでそのことについて質問したら、「本当に働く気があるのか!」などと回答をいただきました(笑)平成10年に、そういった書式の履歴書がなくなってきたらしいです。あ、やば、年齢がばれる!そして、その家族欄を利用して、うまく家族のことをアピールする輩もいたそうですよw
  • 三年前に横浜信用金庫の新卒採用試験で家族構成と家族の職業を訊かれたことを思い出しました。
  • 初対面にもかかわらず、お年は?どこ出身?お仕事は?と、警察の尋問のように聞く人が多すぎる。もう一つおまけに、ご結婚は?旦那さんは?。もっと親しくなってから徐々に聞くとかできないのかな?
  • その絡みでいけば手書きの履歴書とかもうアホかと。そもそも採用する側が自分で選考に必要な情報を特定出来ていない証拠。>私も「手書きなんてアホ~」と考えますが、まだまだ、受け入れられていないのが現状ですね。書道の影響でしょうかね~

既存の枠から漏れた優秀な人達はみな制約の無い外資へ

  • 外資系というのは一つの選択肢ですね。うちでは26歳学部卒の人を新卒採用するなんていうのも普通ですから。
  • 私の優秀なT大の27歳の友人♂も大手はバッサリ書類で落とされました。世界を見渡せば日本の雇用なんておかしな話です。でも、29歳の兄弟君と30前半の女性が新卒で某外資で内定貰ってたので、要は遠回りした分をストレートで卒業する人との差別化、自分の魅せ方が大事なのかと。あと外資は比較的年齢気にしないと思います。
  • 単価が高く変な色が付いている中途より、2年以上の遅れがある新卒の方が全然パフォーマンス良い気がする。人にもよるでしょうけど。そろそろ人財の選択もうちょっとシビアになった方がいい気が。
  • 日本とは真逆だな。>米国では新卒嫌われていますね。彼らは彼らで実用的な技能を身につけなければならないから大変だよなと思います。>終身雇用は崩壊しましたが、新卒信仰のほうはまだ根強いようですね アメリカでは逆に新卒は嫌われますよね
  • 記事面白かったです。現在北欧で仕事しています。日本人が海外に出ると気に入っちゃって帰ってこないのがわかります。自分のことを女だからいらないと言ってくれた日本に後悔させてやりたいです。

若者も政治に関心を

  • 政治家は選挙にいかない層(=若者)のために動くことは絶対にないということを地道に広めるしかありません。*今は、直接票につながる老人たちの顔ばかりを…
  • 若者の投票により国勢が大きく左右される、という実感が動機付けになりそう。ただ、現状はこの通り70以上を除けば20代が一番頭数が少ない。そこでだ。一票の価値に投票者の年代の人口と反比例するようにウェイトをかける、というのはどうか
  • 雇用に流動性が出てくるとビジネス→政治への参入障壁が低くなる。なので、落選したくない既存の政治家は優秀な人材が政治に入ってこないよう雇用をガチガチ硬直状態のままにしておこうというインセンティブが働くのではないだろうか。この件はあまり政治家に期待できなさそうだ。

その他

  • 「7割は課長にさえなれません」という題名でウチの課長が実は勝ち組だった事に気づいた。
  • 大学で勉強したことは評価の対象どころかマイナスとして扱うのに、採用した社員に対して「使えない」とのたまう不可思議さ。
  • 定年延長・再雇用制度で65歳まで働けるようになったため、人件費抑制で若者は雇われないのもあるかと。
  • 記事読みました。本も以前読んだのですが、結局の所若い世代が、声を出してボトムアップで変えてくしかないように感じてます。最近でこそ、この手の話聞くようになってきましたが、まだまだ気付いてない人は多いので自分の周りに話すことから始めようかと考えてます。

【書評】7割は課長にさえなれません~年齢で人の価値が決まってしまう国~」への3件のフィードバック

  1. 確か日本人の平均年齢って46歳くらいですよね。投票者の平均は一体何歳に(笑)

    公務員削減だって役に立たないのから2割切ればいいのに、全体像が曖昧なままにまず新規採用半減だけを決めてしまう。これも城さんに言わせると「既得権が温存でき、なおかつ労組が損をしない政策だけは異様に速く決まる」からだそうです。

    今の日本にある格差のなかで最大なものは「世代間格差」であるといって間違いないでしょうね。

  2. ピンバック: 世界的な人材獲得競争 « The Wisdom of Crowds – JP

  3. ピンバック: 年齢差別のない国で生きる女子大生達 « The Wisdom of Crowds – JP

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