面接官が考えていること。そして面接で落とされないために必ずするべき事。

この記事では東京で知った面白い話、「新卒採用の面接官をした方の話」を紹介します。日本人なら誰もが知っている有名企業で、新卒採用の一次面接を担当している方の話です。ちなみに100人単位で面接しなければいけない人気企業です。そしていわゆる「コミュニケーション能力」が重視される面接とはどういうものか、そういった面接官側からの話です。

まず彼が言うには「100人を面接したら95人は全く印象に残らない」とのことです。それは「大多数の人が同じような事を面接で自己PRするから」た「そもそも自己PRを論理的に出来る人が少ないから」だそうです。また「面接官は話の細かい点なんて聞いていない」とも言っていました。志望者が話している間に次に何を質問しようかと考えていて頭がいっぱいだそうです。だから記憶に残るのは話のだいたいの主旨とその時の印象だけ。

これはみなさんも身に覚えがあると思います。例えば、この前のオフ会では20数人の人に1分間自己紹介をしてもらいましたが、私もまともに自己紹介を覚えている人はほとんどいませんでした。人間の認識力・記憶力ってこれくらいにいい加減なものです。

他に面白い助言は「最初の5分間が勝負、挨拶と立居振る舞いをしっかりとして全力で好印象を与えるようにすること」とのこと。最初に良い印象を与えることが出来たら、その後の面接では何かを言うたびにプラスの評価がされ続ける、ずっと良い評価が与えられ続けるとのことでした。逆に最初がいまいちだとその後で話す内容が良くてもあまり評価されなくなると言っていました。

試験で一定以上の学力・基礎能力の志望者達を選ぶことが出来たら、彼の企業ではあとは他にこれといった評価基準が無いので「面接官の印象」(いわゆるコミュニケーション能力ですね)でしか評価できないと言っていました。「印象だけで大部分の評価が決まる」のだから面接される側はこういう些細な事で落とされないように、「全力で最初の5分間に好印象を与える対策」をした方が良い。これが面接官の彼からの助言です。

一方企業の側は、面接官に明確な評価基準がないとあくまで印象でしか評価されないことを知っておくべきです。基準がないと「面接官にとって好印象な志望者」しか選ばれません。好印象でなくても有能な人物が落とされる可能性があるのです。「企業にまともな評価基準がないのなら、一定能力を満たしている人から早い者勝ちで採用しても良いんじゃないの?その方が手間も費用もかからないし」と彼の話を聞いていて思いました。

学生は「コミュニケーション能力」という訳の分からない物差で測られますが、面接官側にとっても「コミュニケーション能力」というのは訳の分からない物差なんだなと彼の話を聞いていて思いました。

そして面接官の彼によると「人を正確に見極めようと思ったら、1ヶ月くらい一緒に働いてみないと無理。むしろ、1ヶ月でも少ないと思う。そういう手間とコストをある意味省くため、30分、1時間という短い時間の中で全力で相手を見極めたいと企業は考えてる。」と言っていました。現状に多々不満はあるようですが、現場ではいま出来る事をやっているようです。

以下、この事をTwitterで紹介した際にあった面接を担当しているであろう方々からの主な反論を紹介します。

  • 「印象採用=好き嫌い採用」なんて論外。採用担当者は最後まで自分の第一印象を疑って面接をするように訓練されています。可能な限り主観を排除せよと。全く逆の考え方で驚きました…
  • 第一印象はあてになりません。恋人を選ぶのではなく仕事を成功に導くためのパートナーを探すのだから主観は排除するよう努めるべき
  • 当社ではそういうことにならないように、明確に評価基準を定めています。その基準は社員の人事評価基準に則っています。質問項目も決まっています。こんなに大事なことを、コミュニケーション能力とか面接官の印象とか、そんな曖昧なことで判断するわけにはいきません。

これらを読んで思ったのが、ちゃんと面接官を専門に担当する人々もいるということを知りました。プロの面接官は明確な評価基準を持っていて、印象になるべく左右されないように努めているようです。

しかしながら、ちゃんとした面接の技術を持っている企業がどれだけあるのだろうかとも同時に考えさせられました。冒頭に紹介した彼の企業は超一流企業です。でも、そんな彼の会社でさえ一次面接は極めて曖昧なのです。いわんや他の企業はどうなのでしょうか。

しっかりした会社ばかりだと良いんですけど、世の中には明確な基準もなく「なんとなく」で業務を行っている会社は多いです。しっかりとした企業にお勤めの方は幸いです。「業務の引継をまともしない。だから担当者が変わるたびに最初から全部やり直さないといけない」そんな組織もありふれています。

そういう現実を踏まえた上で、明確な評価基準を持たない面接官に落とされないためにも「最初の5分間で全力で好印象を与える対策をする」事をこれから就職・転職活動に臨む人にお勧めします。第一印象で落とされたりしたら、その後で自分の能力・実績を語る機会さえなくなってしまうので、こういう些細なことで落とされないようにしっかりと「第一印象対策」をしましょう。

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追記

外部から直接このPageを訪問した方へ。私のblogでは他にも下記の記事を公開しているのでもし良かったらこれらも読んでみてください。

TOEIC860点を取得、かつ日本の英語教育で欠けている「話す」「書く」ための英語学習方法を紹介しています。私が数百万円の費用と数年の歳月をかけて学んだ学習手法を公開しています。この勉強法のおかげで私はNew Yorkで出会った人々と英語で交流することが出来ました。※この勉強法ははてなブックマークを2,250以上獲得した人気記事です。

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面接官が考えていること。そして面接で落とされないために必ずするべき事。」への3件のフィードバック

  1. 私が前職で新卒採用をしていた(3年で1,000人近く面接したと思います)ときに考えたこと、上司と激論を重ねて導いた一つの結論をご紹介します。

    ■前提

    たかが数十分×数回の面接で人物を見極めることはできない。

    ■結論

    上記を受けた結論は以下です。

    「数十分×数回の面接からでも類推しうる、基底能力や姿勢のようなものの発露を注意深く感じ取るような選考(面接)をする」

    ■選考のポイント

    上記の「基底能力」とは、以下のような能力と定義していました。

    ・物事を深く考察することができるか?(仮説構築能力・情報収集力もここに含まれる)
    ・考察した結果を、ロジカルに組み立てることができるか?
    ・そしてそれを適切にプレゼンテーションすることができるか?

    このような点で人物を測るために、質問項目等ももちろん用意していました。
    面接の場はコミュニケーションの場ですから、ある意味評価されるのは「コミュニケーション能力」なのかもしれません。

    しかし、「コミュニケーションのなかから何を見極めたいのか?」という軸があれば、それは意味のあることだろうと思います。

    HALさんが言うような「訳の分からない物差し」を提示するような企業は恐らく、そのような軸がないか、選考の手段としてのコミュニケーションが目的化してしまっているか、のどちらかなのではないかと感じます。

  2. 本文とkazu_takano_j さんを見れば、本当に人材を大事にしているごく一部の企業はそうなんでしょうけど、残念ながら大半は違うと思います。

    そもそも、今も昔も、特に今上級職や採用の責任者になるような40~50代じたい、経験第一、知識や理論が二の次の「体育会系世代」でしょ。官僚ですら未だに博士号もちを排除し経験(東大法学部を「経験」し、上級職実務で「経験」を重ねた人間だけがより出世する)を重視するようなシステムですから。

    真の意味で日本がお二人のいうような主観を排除するような面接方法が主流になるには、そもそも業界全体の人事や待遇、評価システムの改変が避けられないと思います。面接だけ主観を排し、業務に評価者の経験則という主観を強く残すようでは自己矛盾ですから(経験を否定しているのではなく、経験から経験知という組織内の共有財産が生み出されれば、それは客観といえるでしょう)。

  3. ピンバック: The Wisdom of Crowds – JP - 何よりも大事なのはSite Map。これが無ければあなたのblogは多くの人に読まれない。

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