日別アーカイブ: 2010年6月17日

英語が出来ない教師が英語を教えている。

文部科学省が公表している上記の資料を読んで、日本の英語教育の問題に気付きました。特に「3 教員の英語力について(新項目)」について熟読してください。

調査に協力した英語教員17,627人のうち、英検準1級以上、またはTOEFL(トーフル)のPBT550点以上、CBT213点以上、TOEIC(トーイック)730点以上のスコアを取得している者は、8,539人(48.4パーセント)。

なお、外部試験の受験経験のある者のうちでは、74.2パーセントが英検準1級以上(TOEFL(トーフル)等を含む)を取得している。

この資料は高校の英語教員でTOEIC730点、TOEFL550点、英検準一級の取得者は半分未満という結果を明らかにしています。はっきり言って、この程度の英語力ではロクに使い物になりません。そんな低い水準でも、高校の英語教師では達成者は半分未満。この事実に本当に愕然としました。

特に日系企業がこれだけ口喧しくTOEIC, TOEICと昨今言っているのに、教える側の半数ががそもそも730点にすら到達していないという事実に驚きました。私としては英語教師を名乗るからには最低でもTOEIC 860点は取得してほしいと考えています。そして860点は別に普通の人でも努力すれば取れる点数です。最低限この点数に到達できるだけの専門知識があって、はじめて高等学校にふさわしい英語を教えることが出来ると思います。専門知識である英語能力が不足しているようでは、生徒への指導力云々を語ってもまるで説得力がありません。「TOEIC730点も取れない英語が出来ない先生」が英語を教えているという事実が空恐ろしいです。国語教師で例えると、常用漢字も満足に身につけていない教師が教えているようなものです。

ということをTwitter上に書いた際にいくつかの反論が来ましたので、その反論と私の再反論を合わせて紹介します。

反論1 受験経験者は74.2%が持ってます。半数以下というのは受験経験がない者も母数に含めているからです。

再反論 そもそも受験していない教師がいる事が問題なのです。日系企業がこれだけTOEIC、TOEICと口喧しく言っているのになぜ受験していないのでしょうか。教師は学校の外の社会に関心がないのでしょうか。

反論2 教師になろうという人が企業が必要というからTOEICを受験しようというのは論がつながらないと思います。もっとシンプルに言えば,企業に行く人は受けるかもしれないけど,企業を考えずにいる人は要求されてない以上受けない(受験料もあるし)というのは極めて自然な選択では?ということです。学校教員の試験に含まれてないから受けてないだけ,ということです。

再反論 教師は社会で求められている英語力、企業が社員に求めている英語力を生徒に身につけさせる必要はないと考えているのでしょうか。また、そういう教師は学校の外の社会には関心がないのでしょうか。

反論3 現職の教員だと時間を確保するのは難しいというのがあるのでは?話を聞く限り小中高の教員も多忙です。例えば部活動にからむと休日が一日もなくなるとか。

再反論 TOEIC試験のために、日曜日の半日を使う事が出来ないとは考えられません。もし日曜日の半日すら時間を開けることが出来ないというのであれば、それは教師の過重労働という由々しき問題です。

一連のやりとりをしていて、社会のことを、生徒の未来のことを考えずに自分たちが所属する学校制度の事しか考えない教師に教壇に立ってほしくないと強く思いました。私ならそんな人の授業は聞きたくないです。そしてまた、そういう教師を生み出す日本の教育現場とはいったい何なのだろうかと考えさせられました。

先生たちは学校の中で一生を終えられるかもしれませんが、生徒は学校を卒業した後に社会で競争をしなければなりません。それなのに学校の中に引き篭り、また社会の事に関心のない人達が、学校の外の社会を生きなければならない生徒達を教える事が出来るのでしょうか。この現状に気付いて本当に怒りを感じました。

ただ、文句を言っているだけでは現状は何も変わらないので、以下にじゃあどうすれば良いのかという改革案を記します。問題の根源は英語が出来ない英語教師ではなく、そのような教師を生み出す制度の方にあると私は考えています。

改革案1 教員採用過程の透明化

Twitter上で多数のReplyをもらったのが、教員の縁故採用、またそれに伴う汚職についてです。どうやら教員の採用過程においては、教員自身の能力よりはコネの方がはるかに大事なようです。そして、これは地方にいけばいくほど酷いみたいです(これらについてTwitter上で教えてもらった内容は聞いていてあまりの腐敗ぶりに気分が悪くなりました)。教員の質を確保するためには、客観的な採用基準を内外に明確に示して、何をもってその人を採用したのかを明らかにする必要があります。

改革案2 英語力に乏しい教師への対応

現在すでに英語教師となっているにも関わらず、英語力が十分でない教師には研修を受けさせて英語力を向上させるか、その他の職へ配置換えをする。最終的には、教員の免許を更新制にして、5年、もしくは10年毎に教師が必要な能力を身につけているかどうか確認するようにする。

改革案3 教員の給料の向上

優秀な人材を引きつけるために、教員の給料を挙げる。また、教員採用において汚職が蔓延る原因の一つには教員の給料の低さがあると思います。

改革案4 教員の事務作業軽減

小学校〜大学の事務員を増やす。教員が事務をしなければならないという現状はおかしい。教員が教育に専念、また自身の専門性を高められる体制を作る。

改正案5 民間企業経験者を教員に採用する

「実際にどのような英語が社会で求められているのか」そういったことを把握している民間企業経験者を教育現場に採用する。そうすることで、教える内容が時代遅れや時代錯誤なものにならないようにする。

私が考えた改革案とTwitter上でいただいたReplyをまとめたものは以上になります。他にも良い案があるという人がいらしたら、Commentをお願いします。

ただ、これらの改革はとても時間がかかると思います。私自身がすぐに出来ることはといえば現在書籍化の話が来ている「実用的な英語を習得する方法」の学習ノウハウを世の中に広めて、1人でも多くの人がまともな英語を使えるようにすることくらいかなと思いました。問題をすぐに解決出来ないことがとても歯がゆいです。

6月18日追記

Twitterでこの記事について議論をしていて、どうも話が噛み合わないなと感じたのは、「英語教育の目的をどこに置くか(置かざるをえないか)」という点がそれぞれの関係者で全く異なっていたためだということが分かりました。

私の立ち位置は一番最後です。私や一部の企業は「日本国内のみで通用する受験英語教育」ではなく、他国との競争を視野に入れた英語教育を望んでいます。そして、現状の教育制度では、TOEFL上位5カ国とはまともに伍する事が出来るとは思えません。日本国内のみでしか通用しない英語教育では「ガラパゴス」です。こんなガラパゴス英語では日本国内から出た場合、役に立ちません。

高校の英語教師がTOEIC、TOEFL、CBT、英検を軽視しているのは「受験英語」が最も大切で、これらについて教えることは求められていないからです。現状の制度がこうなっているから、親や生徒からしたら受験英語の力が身につく事が最も大切な事であるため、必然的にそうなるのでしょう。でも、これはもう止めませんか。大学受験時にしか使えない英語を学ぶのは日本と日本人の資源を無駄遣いしています。中学・高校で6年間も勉強して「読解」能力しか身につかない、「聞く」「話す」「書く」能力が身につかない英語教育はおかしいです。

学校教育の考え方を大きく変えるためには、現状の制度・仕組みを変えなければいけません。私が挙げたいのは「現状の大学受験英語の廃止(特に何のためにやっているのか分からない、難関大学の生徒を落とすためだけの試験問題)」です。日本人同士でしか競わない現状の大学試験入試よりは、他国の人々と競い合うことになるTOEFL、TOEIC、CBTの方がまだましに思えます。

そして私がここで書いたようなことは出来れば、門外漢の私ではなく、日本の英語教育と日々まさに向き合っている英語教師の方々からこのような意見がもっと出てほしいです。「現場を、教師の世界を知らない人間が何を言っているのか」というReplyが来ましたが、分かる訳がありません。なぜなら現場から十分な情報発信がされていないからです。この点については現職の方々はどのように考えておられるのでしょうか。目先の問題を解決する事だけに終始して、私がここで書いたような問題については興味や関心がないのでしょうか。それとも何か取り組みをされているのでしょうか。具体的に何か取り組みがあるということでしたらこの記事へのCommentをお願いします。教育の現場を見ていない私たちにも分かるように情報発信をお願いします。現在の学校英語教育に対してとても強い不満を持っている人達に対して「現場を知らない人間が口を出すな」と言うだけでは、問題から目を背けていると批難されても仕方がないと思います。

6月21日追記

この記事に書かれている内容、楽天の三木谷社長の危機感がまさに私が感じている危機感です。この危機感が一部の人達に全く伝わらない現状がとても残念です。

「大学で勉強していない人は就職が難しくなると思いますよ。中国人や韓国人は最低2か国語を話せて、専門知識の勉強もしています。これまでのような会社に就職してから教えてもらうという考えでは、外国人と同じ土俵に立てません」

現状の学校制度は古いままなのに、いきなり「ルールは変わりました。これからは専門能力と語学力が必要です」というのも学生にとっては酷な話。例えばこれまで記事を書いていますが、現在のような日本の学校教育を受けているだけでは決して十分な語学力は身につくことはありません。それでも企業は学生に語学力を求めるようになってきました。

6月24日追記

学校での英語教育を廃止せよ

この記事と同様の主旨、そしてさらに過激な解決方法を提言している記事を見つけたので参考にしてください。

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