【学習記録】パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本

この記事は「パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本」を読んだ際に私が書き留めたメモを整理して公開しています。つまり、私の勉強記録です。また、この記事の内容に興味がある人は是非パラダイス鎖国を手に取って読んでみて下さい。

  • 空 いま日本におきていること。

「Japan: A Forgotten Power?」実は今でも「大国」であるはずの日本が貿易摩擦の時代も遠くなり、世界から忘れ去られつつあるというのだ。【パラダイス鎖国 3頁】

Japan Nothing…日米のビジネス関係理論を得意とする、スタンフォード大学のリチャード・ダッシャー教授の教え子たちでさえ、「日本が世界第2位の経済大国であるということを最初は知らない」という。【パラダイス鎖国 70頁】空

Japan Nothing…日本の対米輸出額は増えており、またアメリカの自動車産業が苦境に陥っているにもかかわらず、貿易摩擦時代のように日本を批判する声は上がらない。【パラダイス鎖国 70頁】空

●人々の意識

清潔で綺麗な街、美味しい食事が出来ると日本は欧米よりもすでに住みやすい国となった。海外への憧れは薄れ、また国外で働くことにデメリットを感じるようになった。

2007年 新入社員のグローバル意識調査…「海外赴任をしたいかどうか」については「いいえ」が2004年の28.7%→2007年の36.2%に急増。【パラダイス鎖国 32頁】空

2007年 新入社員のグローバル意識調査…「もし海外赴任を命じられたら、どうしますか?」では「喜んで従う」人が37.1%から29.3%に激減。「できるだけ拒否する」人が21.8%から30.5%に急増している。【パラダイス鎖国 33頁】空

最近の日本企業のアメリカ駐在では、本社から遠くなることで社内の政治力学に疎くなる、アメリカでの事業展開に取り組もうとしてもリソースを割いてもらえない、といったボヤキを聞く。中には本社は何も決めずに人だけ出して丸投げ、海外赴任者は燃料も武器も自分でなんとかしろという特攻隊もどき、とまで嘆く声もある。【パラダイス鎖国 58頁】空

●産業

多数の企業が国内市場で過当競争していることに関連して、国内市場でのシェアは高いが世界市場でのシェアは低い、いわゆる「内弁慶ビジネス」が目立ってきている。日本市場は世界市場の1割弱の大きさに過ぎず、日本の大手電機がこぞって参入すると短期間のうちに普及してしまい市場は飽和する。内弁慶ビジネスが増加すると、ひとつの製品で収益をあげられる期間は短くなってしまい、中長期的に安定したビジネスは不可能である。【パラダイス鎖国 40頁】空

こうした内弁慶ビジネスとして、携帯電話端末を筆頭に、そのほかパソコン、白物家電、発電機などの重電、通信機器、コンピューターソリューションなどが挙げられる。【パラダイス鎖国 41頁】空

アメリカの携帯電話業界では、日本のメーカーはまったく影響力を持たない。日本は世界をリードする携帯技術を手に入れたが、他の市場を捨ててしまうという皮肉な結果となった。【パラダイス鎖国 36頁】空

世界の携帯電話市場で、加入者ベースで見ると、日本は中国、アメリカ、インド、ロシアに次いで第5位。だが、金額ベースでは、アメリカに次ぐ世界第2位を維持していると推測される。【パラダイス鎖国 37頁】空

日本の携帯電話は、普及率でほぼ飽和点に達しつつあり、今後は買い替え需要が中心の低成長市場となる。これに対し、世界の市場では、新興国の需要が猛烈な勢いで増大している。【パラダイス鎖国 39頁】空

産業の「パラダイス鎖国」はほかの業界にも及ぶ。通信産業では、交換機、無線設備、ルーターなどのネットワーク機器で日本のメーカーは国外にまったく存在感がない。【パラダイス鎖国 40頁】空

大手電機メーカー10社(NEC、富士通、日立製作所、東芝、三菱電機、ソニー、松下電器、シャープ、三洋電機、パイオニア)の売上高合計は、51.3兆円(2005年)で、自動車7社とほぼ同規模であり、日本のGDPの約1割を占める。大手電機メーカーは素材・部品・販売・物流など裾野産業も広い。この巨大で影響力の大きい業界がパラダイス鎖国によって、世界で競争していくための数量と販売網を失い、ますます国内に引きこもってブランド価値を下げていくという「閉鎖ループ」に入ってしまうと、その悪影響は大きい。【パラダイス鎖国 41頁】雨

  • 雨 パラダイス鎖国は何が問題なのか

●大量生産が出来ないと利益が出なくなる。 「グローバル市場とコスト」…公式1 数の多い方が勝ち。【パラダイス鎖国 45頁】空

工場の生産ラインは(大量生産によって)静かなほど低コストである。部品も大量に納入されるので品質も安定する。数量が大きければ、その分、製品の品質もよく、コストも安くなる、という現実を、静々と威圧するように流れるアメリカ向けアコードは無言で語っていた。そして、もしこれだけの数量のアメリカ向け輸出がなかったら、国内仕様車のコストもさらに跳ね上がってしまう。日本で販売量のないホンダにとっては、たとえ貿易摩擦で叩かれようとも、海外市場での数量を失うことは決して許されない(80年代の話です)。

貿易摩擦の時代に「日本のメーカーは、利益よりもシェアを重視する」と、よく他国や当地のメーカーから批判されたが、シェアがなければ利益もでないのが現実だから、日本のメーカーとしては仕方がない。(中略)M&Aのやりにくい日本では、違う形でシェア競争をせざるをえなかったのだ。70年代の高度成長期の勢いを受け、円安にも助けられて、日本企業はこのころ「数の多い方が勝ち」という「グローバル市場とコストの公式1」を突っ走っていた。【パラダイス鎖国 46頁】空

●通常よりも製品/Serviceを高く売ることが出来るジャパン・ブランドの維持が出来なくなる。 「グローバル市場とコスト」…公式2 グローバル・ブランドの確率と維持【パラダイス鎖国 46頁】空

「数の多い方が勝ち」という「公式1」を徹底的に追求した韓国、中国や、アメリカのメーカーに対して、日本のメーカーはコスト優位を保てなくなった。高機能化・プレミアム価格に頼ろうとしても、ハード部分のチープ化・単純化によって誰が作ってもあまり基本性能に違いがなくなり、より労働力コストの安い国への外注が進み、また製品全体に対してソフトの占めるコスト比率の増大で日本製品の優位性が低くなった。(中略)機能・品質は高いけれど値段も高い日本製品を買ってくれる人が少なくなってしまった。【パラダイス鎖国 54頁】空

●この2つの問題が起きたのは産業の変化に企業が追いつけなかったため。

人材流動性が低いために、部門売却・企業合併や人員削減は、企業が崩壊寸前の状態にまで陥らない限り、マスコミや世論が許してくれない。【パラダイス鎖国 55頁】雨

過去の成功体験がむしろ邪魔になり、日本の電機産業は、企業統合による思い切った規模拡大によって、体質を新しいコスト構造に変換することができなかった。【パラダイス鎖国 55頁】雨

●企業が海外市場を失っていったのは世界第2位という大きな国内市場を重心していたため。

2008年 各国の国内総生産順リスト(単位は10億US$) 1位 米国 14,264.60、2位 日本 4,923.76、3位 中国 4,401.61、4位 ドイツ 3,667.51、5位 フランス 2,674.09>参考 各国の国内総生産順リスト

日本人の中には「日本は輸出大国である」という認識を持つ人がまだまだ多いと思われるが、GDPから輸出に注目してみると、実際にはほかの国と比べてそれほど大きくないのが現状なのだ。【パラダイス鎖国 67頁】空

GDPに占める輸出の比率が低いのは日本の輸出が「少ない」のではなく、「国内市場が大きい」ということである。【パラダイス鎖国 68頁】空

少なくとも、過去20年程度に関していえば、日本は「大きな国内市場」を持った、アメリカと並ぶ「世界の大国」なのである。【パラダイス 鎖国 70頁】空

●日本がパラダイス鎖国にこもり、変化に対応をしようとしなかったのは変化をすることを嫌ったため。

日本が進んでいる点と、比較的遅れている点の特徴…金融政策や各種の権利保護など、立場の違いにより賛否両論あるような点はなかなか進まないが、「鉄道が便利になる」「上下水道が整備される」「初等教育を普及させる」などといった、誰も批判しにくく、暗黙の合意が形成されやすいものについては、どんどん進む。たとえば、義務教育と違い、一部の人が享受する高等教育の普及率ではほかの先進国より成績が悪い。(中略)結果的には、誰かが得をして誰かが損をするのだが、このように議論が分かれるものについては動きが遅い。また、ブロードバンドやインターネットアクセスの普及というのはわかりやすく、誰も反対しないので進んでいるが、そこで流す映像の居咲件をどのように扱うのか、という点では、議論が分かれて一歩も前に進まない。【パラダイス鎖国 74頁】雨

パラダイス鎖国へ至る過程 「日本はかつて、輸出大国であった」→「日本の企業が海外で競争力を失ってしまった(特に電機業界)」→「内需主導型になって国内ばかり重視し、産業構造が大きく変わった」→「日本は海外で無視されるようになっている」【パラダイス鎖国 79頁】雨

日本の閉塞感の原因となっている最大の課題…日本の企業は過去の成功体験にとらわれ変化が遅い、あるいは大企業では特に雇用の流動性が低い、という問題がある。【パラダイス鎖国 83頁】雨

流動性の低い日本の大企業では、仕事量が急激に減るといったような場合に考えられるリスクを負いにくく、また現在の人員だけでも養うのが大変なので、まったく違う資質の人を雇う余裕もない。このために、外の環境が変化しても、企業の戦略や体質を変えることがなかなかできない。【パラダイス鎖国 83頁】雨

(変化が遅い、雇用の流動性が低いという)同じような理由から、産業の新陳代謝が進まず、新しい産業やベンチャーが勃興する力が弱く、あっても国内市場限定であり、海外にブランドを確立できた新顔は、ここしばらく出てきていない。【パラダイス鎖国 83頁】雨

●日本の弱点。議論が分かれることについては、誰かが責任を持って決めて体制を変えることが出来ない。

社会制度の分野でも、議論が分かれることは一歩も進まない。(中略)通常は、長い時間かけていつの間にか「暗黙の合意」が形成され、既得勢力でも反論しにくくなるまで待たなければならない。本来であれば、試行錯誤を繰り返しながら徐々に変わっていくべきものが、いつまでたっても変わらない。しかし潜在パワーが大きいので、そのエネルギーは「議論の分かれない」「衆目の一致する」分野に集中し、既存の製品の高機能化競争に血道をあげる。このため、使い方もわからないような高機能満載の製品でお互いに競争したり、「セカンドライフが流行る」といわれれば我も我もと出店したりする。衆目の一致しないことをやって失敗すればひどく叩かれるが、周りと同じことをやっていて失敗しても、「仕方がなかった」となる。【パラダイス鎖国 84頁】雨

いつも同じところで、みんなが競争すれば、疲弊と閉塞は加速する。何かと目立つ電機業界が、アメリカ政府から直接文句をつけられない日本市場だけに集中する、という現象もそのひとつといってよいかもしれない。まったく変わらないわけではなが、大変な時間とエネルギーを浪費している。現在の状況に必要以上に適応しすぎ、肥大化して、外界の変化についていけなくなってしまえば、行き着く先は「恐竜化」ということになる。【パラダイス鎖国 85頁】雨

●パラダイス鎖国にこもり、国外の変化に対応できない場合に発生する問題

パラダイス鎖国によって「日本製品は強い」というこれまで築きあげてきた「ジャパン・ブランド」が崩れてしまうと、安価がウリの、ほかのアジア諸国の製品との価格競争を強いられることになる。他国製品より少々高くても消費者は日本製を選択してくれた。それがなくなる。【パラダイス鎖国 86頁】雨

従来の「生産性向上」という、漸進的な対策で環境に対応できるうちはよいが、工業製品を越えた、ソフトやサービスの分野で新しいことに挑戦すると、必然的にコスト構造やエコシステム(業界全体の収益構造)の大きな変化を伴うため、既存勢力と衝突を起こす。(これを日本は避けている)【パラダイス鎖国 87頁】雨

日本で興る新しい産業や企業は、「当初は、どうでもよいと思われ無視されていたようなもの」が多い。ソフトバンクもテレビゲーム会社も、かつては既存勢力の目の届かない「どうでもよい企業」であったし、(続く 続き)また携帯コンテンツ・プロバイダーや、楽天のようなEコマース、マンガやアニメもこれにあたる。こうした「周辺産業」、「ニッチ産業」がやがて将来の大産業に育っていけばよいのだが、その成長過程でまたなにかと邪魔が入る。【パラダイス鎖国 88頁】雨

  • 傘 じゃあどうやって問題を解決するのか。

●変化を起こすためにまずはWebで変化を起こす土壌を作る。

誰かが危機感を訴えることに成功し、痛みを伴う改革に着手したとしても、この大きな国の長年にわたる体質に起因した問題がそう簡単に解決するはずがない。現在の状況は、それなりに意味や経緯があって成立しているわけだから、変えようとすればどこかしわ寄せがくる。変化によって損をする人が騒ぎ出し、反動による逆行が始まる。ここまでパラダイス鎖国の問題を挙げてきたが、「身を切って改革」というよりも「このぐらいだったらやってもいいかな」ぐらいの小さい変化を積み重ね、徐々に新しい時代に適応する体力を作っていくのが、パラダイス鎖国時代を健康に生きる知恵である。【パラダイス鎖国 92頁】傘

アメリカ人は、ウェブではなくリアル世界での「クラスター化」活動をすることにあまり抵抗感がない。もともと欧米には、人々の自発的な「クラスター化」をよしとする文化があり、そういう教育を受けているからだ。しかし、そういった文化のないシャイな日本人は、よほど強い思いがないと、なかなか行動までに移せなかった。(中略)そんな普通の人たちにとっても、「クラスター化」のための敷居が、ウェブのおかげで大幅に低くなったのである。このため、人と情報の「クラスター化」に参加する日本人の数は、飛躍的に増加した。もともと「クラスター化」の文化を有する欧米人よりも、文化として持っていなかった日本人にとってのほうが、ウェブによる「クラスター化」は社会的に画期的な意味を持つ。【パラダイス鎖国 97頁】雨 → Twitterは日本人をクラスター化するのに最適な一つの道具。

ウェブ上での活動が日本を変えることに直結するわけではないかもしれない。しかし、その面白みをしめた日本人の数が、従来の何千倍、何万倍になったとしたら、それが持つパワーは計り知れない。従来なら、「自分が何をやったって、世の中何一つ変わらない」と思うのが当たり前であったのに対し、いまなら「ほかにも同じことを考えている人がいる」「少しなら変わるかもしれない」「大した手間じゃないからやってみよう」と思うことができる。【パラダイス鎖国 98頁】傘

●変化を起こすのはなぜ?それは技術刷新Innovationを起こすため。

パラダイス鎖国の第1問題、「ジャパン・ブランドの衰退」に対処するには、常にイノベーションを起こし、最先端の技術を生み出し、時代を先取りしたサービスや製品を作り、世界市場で効果的に販売することで、コスト競争力のある新興工業国やBRICs諸国と差別化を図っていくこと意外にない。【パラダイス鎖国 100頁】傘

常にイノベーションを起こして成功するには、技術や市場の変化に一歩先んじていかなければならない。だから、新しい状況に対応して変化できる体質が必要になる。ジャパン・ブランドを維持するには、イノベーション・ベースの経済体質を強化し、どんどん変化して行く技術や市場に迅速に対応することが必要なのである。【パラダイス鎖国 101頁】傘

●日本がこれまでに取ってきた主な戦略、日本型の果てしなき生産性向上。

「豊かさ」の戦略 4.日本型の果てしなき生産性向上。漸進的なプロセスの効率化によって、製造部門の生産性をひたすら向上させること。輸出産業では、円高で価格が不利になっても、そのたびにさらなる効率化と生産性工場で乗り切った。ところが、「デジタル・チープ革命」の影響をもろに受けた分野を中心に、こういったやり方が行き詰まりを見せている。日本型のプロセス効率化で違いが出せなくなった分野では、日本製品の競争力が落ちる。【パラダイス鎖国 106頁】雨

●日本が積極的に取り入れるべき戦略、シリコンバレー型試行錯誤方式

スタンフォード大学の授業で教授が「アメリカ政府が産業政策を実施することはよいことだと思うか?」とわざわざ質問した。次の瞬間、「実施すべきでない」にほとんどの手が挙がったのである。アメリカの学生たちは、その理由を「どの産業、あるいはどの企業が、勝ち組か負け組かを、政府が決められるはずがない」と説明した。この「レッセ・フェール(なすがままに任せる)」を原則とし、手探りの試行錯誤を繰り返すやり方は、アメリカというよりも、常に新しい技術が勃興するシリコンバレーで強い考え方であり、この地ではすべての仕組みの根底にある根源的な思想といってよい。どの産業が勝ち組かが分かるのは、「追いつき追い越せ」的な立場にある場合だけである。自分が最先端にいれば、先のことはまったくわからないのが当然である。【パラダイス鎖国 108頁】空

日本の企業は「衆目の一致する有望商品」「世の中の暗黙の合意があるもの」が好きである。「プロセス効率化」を重視し、失敗してその努力が無駄になることを嫌うので、「リスクと、当たった場合の儲けを比較する」のではなく、ひたすらリスクの低い方を選ぼうとする傾向が強い。その結果、「みんながやっている」分野に集中するのである。【パラダイス鎖国 114頁】雨

霧の中で見えないものに向かって完全と進むこと、あるいは、ほかの人には見えないけれど自分だけが見えるものを探すこと。こうした自分にとって必ずしも楽ではないことをやってみようということ、それが「フルモデルチェンジ」を目指すシリコンバレー型試行錯誤方式なのである。>日本のこれから取るべき戦略 その2「試行錯誤戦略」

梅田望夫氏が提唱するけもの道戦略>大企業や専門性の高い職業において、多くの人がひしめく既存のルートで競争を勝ち抜いていくいくやり方を「高く険しい道」と呼び、これに対し、自分なりの「好き」を貫き、これまでにない仕事や生き方を試行錯誤で作り出していくやり方を「けものみち」と呼び、ウェブ時代の新しい考え方として提唱している。

試行錯誤方式は確かに、無駄も多く効率の悪いプロセスだが、まったくの新しい産業を生み出す、ほぼ唯一の方法でもある。今の日本なら、新しいものを作りだすための途中の無駄やコストを負担する余裕がまだある。その余裕する失ってしまう前に、新しいものを作りだすための一歩を踏み出すべきなのだ。【パラダイス鎖国 116頁】傘

(日本は)あらゆるものが、ひとつのシステムに統合されて動いているので、うまいくっているときはきわめて効率が良いのだが、何かを変えなければいけなくなると、自分で変化を生み出し育てることができない。外からの強い力で存亡の機器にさらされなければ、変わることができないのである。アメリカの中では、シリコンバレーやカリフォルニアは特に「変人」の集まっている場所であり、ここがしばしば英語でいう「change agent(変化のきっかけとなる触媒)」、別のいい方をすれば「国内における黒船」の役割を果たすことがよくある。同様に、日本でも「内なる黒船」が必要なのである。しかも、際立った才能を持つ個人とか、たまたまよいタイミングで吹く神風とか、そういった偶然に近いものを頼りにするのではなく、継続的かつシステマティックに、黒船を生み出す仕組みがほしい。それを可能にするのが、「試行錯誤戦略」なのである。【パラダイス鎖国 122頁】傘

「試行錯誤戦略」を取り入れて変化し、まったく新しい産業を興し、たとえレガシー産業との軋轢があってもそれを育てるといった力が、必要とされるようになっている。すなわち、「イノベーション」を促進する仕組みである。【パラダイス鎖国 123頁】傘

●シリコンバレーの仕組み、厳しいぬるま湯

シリコンバレーの「厳しいぬるま湯」。技術ベンチャーで有名なこの地だが、ベンチャーとはそもそもハイリスクなものである。大成功した例ばかりがメディアでは知られているが、その影には成功例の何百倍か、見方によっては何千倍ぐらいの失敗例が積み重なっている。なぜそれでもベンチャーを起こしたり、ベンチャーに就職したりするのかといえば、ひとつは、よく知られているように成功したときの儲けがものすごく大きいからであり、もうひとつは、失敗しても実はそれほどダメージがないからである。【パラダイス鎖国 128頁】空

勤めていたベンチャーのレイオフや倒産で失業するというのは、この地では日常茶飯事である。しかし、仕事がなくなるのと同じ速いペースで次々とベンチャーが立ち上がり、また大企業であっても従業員が他社に転職したり自分でベンチャーを始めたりして欠員が出ることが多い。【パラダイス鎖国 128頁】空

(シリコンバレーの話)自分が起こした会社が失敗したり、勤めている会社が倒産したりしても、それ自体は経歴の傷にならず、また給与水準は必ずしも企業の大きさと比例せず、小さい企業に移っても収入が下がるとは限らない。別の会社に移れば力を発揮する技術者がたくさん転がっているので、一度の失敗でバツをつけられることはない。失敗は恥ではなく、傷のひとつや2つがあった方がむしろ仲間に入れてもらえる。そういった人材をひとつの会社だけでなく、シリコンバレー全体の中で柔軟に流通させることができる。【パラダイス鎖国 128頁】空

シリコンバレーにおいて、ベンチャーを起こすとか、フリーランスとして独立するとか、小さい企業に転職するとか、そういったことは日本で多くの人が考えるほど大冒険ではない。ちょうど保険のように、一企業だけでなくより広い範囲で雇用リスクを分散する仕組みが出来ている。【パラダイス鎖国 130頁】空

●日本でシリコンバレーのような環境を創る方法

日本でシリコンバレーのような「厳しいぬるま湯」環境を創るには、人のつながりを中心として、バーチャルに作るのが現実的であるかもしれない。誰かが、なんらかの指向性を持ったコミュニティを作り、そこに社会的に影響力や資金を持っている個人や企業がパトロンとして参加して、「黒船」になりたい人がその庇護を受けながらアクションを起こす。周囲の人はそれをおもしろがり、賛同し、ネットで援護射撃し、商売に役立つならばその製品を使い、既得勢力から攻撃されれば団結して防衛する。【パラダイス鎖国 135頁】傘

最初のうちは、それが直接的に起業といった「金銭的」な結果を伴なうものではなく、「サロン」や「運動」のようなものであるかもしれない。参加する人への見返りは、刺激的な人に出会ったり知識を得たりといった、非物質的なものにとどまることも多いだろう。その代わり、参加するための入場料はきわめて安い。【パラダイス鎖国 135頁】傘

→これはまさにTwitterの事かと思った。日本ではTwitterが福音となりそう。人々がどんどんとクラスター化しているであろう5年後を考えるとワクワクする。

●変化は混乱と混沌と共にやってくる。

混沌は試行錯誤で新しいものを生み出すエネルギーである。混沌と創造的出会いから、新しいアイディア、新しい企業、新しい産業が生まれ、先端的で独創的な、マージンの大きい「イノベーション・ベース」の経済となっていく。【パラダイス鎖国 133頁】空

混乱そのものは、悪ではない。それは、新しいものが生まれてくる前段階であり、それにはチャンスがたくさん詰まっている。効率優先主義に凝り固まった人には受け入れがたいことかもしれませんが、新しいものを求めるなら、混沌を恐れてはいけない。いや、むしろ時代に必要なものとして、意識して積極的に生み出す必要がある。【パラダイス鎖国 141頁】傘

産業や企業は、結局のところ個人が集まって出来ている。企業の中の個人が多様化することが、産業全体を多様化し、内なる黒船を作り出す原動力になる。その特徴や方向性は、個人レベルでなるべくバラバラになるのが望ましい。多様な人が、意見を交換したり一緒に働いたり、喧嘩したりすることにより、創造的な出会いが起こる。【パラダイス鎖国 146頁】傘

シリコンバレーは、プチ変人のメッカである。あまりに変人が多いので、伝統的な価値観や秩序を重んじる人にとっては住みにくいところだが、変人にとっては居心地が良い。シリコンバレーは、子供の頃、「君ってオタク~」という偏見を持たれてきた人がたくさん集まっている地でもあり、しかも、そういう人が尊敬される場所。エンジニアでは服装がこぎれいな人よりも小汚い方が「できるやつ」と一目置かれたりする。【パラダイス鎖国 149頁】空

シリコンバレーのような厳しいぬるま湯の恩恵をいち早く受けるには、個人の戦略としては短期的には「移住」が手っ取り早い。【パラダイス鎖国 150頁】傘

運動会の順位をつけないことでスポーツの得意な子のやる気をそぐよりも、ありとあらゆる能力を競えるイベントを増やして、誰でもひとつぐらいは目立てる場所を作ってやるほうがよい。それも、別に学校で全部やる必要はない。どこかに、「厳しいぬるま湯」があればよいのである【パラダイス鎖国 157頁】傘

●英語の重要性

チャンスに出会うためには、なるべく多くの情報に接している必要がある。日本だけでもネットを使えばベースは広がるが、英語ができれば情報の量はもっと飛躍的に増える。ロングテール時代には情報が行き来するベースが広ければ広いほどよい。【パラダイス鎖国 154頁】傘

いま何をすればいいかがわからないときは、とりあえず英語を勉強したらよい。どれでも外国語ができればトクだが、英語は世界で最も潰しのきく万能スキルである。どこの国でもどの分野でも、何かしら役に立つ。ロングテール戦略の情報獲得にも使え、世界が広がる。【パラダイス鎖国172頁】傘

【学習記録】パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本」への2件のフィードバック

  1. ほんとに鎖国ですよね、日本は今。だからこそ、この状況を嘆くのではなく、こうやって情報を発信して、変化させるためのアクションをとられているHalさん、尊敬してます。 webでクラスター化していけば、長い目で見れば人の意識と行動がかわり日本は変わると信じています!これからもブログ読ませていただきます。

  2. とおりすがり

    土着性が強く、比較的気候が毎年一定している島国が変化を嫌いのは、当然なわけで。それこそ、ヨーロッパ大陸の国々はローマ帝国が1600年前に無くなった後、お互い異質なものを取り込むために、1600年試行錯誤して知恵を蓄積したわけで。その蓄えがない日本では、右往左往するわけで。その間、外から来る人が増え続ければ、排斥・融和が織り交ざり、変化していくと思われ。

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